消せない:児童ポルノと性犯罪/3 画像買いあさった過去
2008年 06月 04日
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消せない:児童ポルノと性犯罪/3 画像買いあさった過去
◇自ら「もう見ない」
取材場所に指定されたのは東京都内の繁華街のカラオケボックス。男性は表情を変えず淡々と語り始めた。
「今は良くなりましたが、少し前まで大浴場や公園を避けていました。男の子が近くに来るとパニックになってしまうので」。男性は40代の団体職員。首都圏のマンションで1人暮らしをしている。
中学生のころ、電車で隣に座った男児の太ももを見て「触りたい」と思った。「なぜこんな気持ちになるんだろう」。まだそれが性欲とも気づかなかった。20歳になり漫画雑誌で男児が性虐待される描写を見た。「僕が求めていたのはこれだ」。ありのままの自分を見つけた気がした。でも誰にも言えなかった。
インターネット上で仲間を探した。児童ポルノアニメの愛好サークルを見つけ会合に出たが、話が合わずにやめた。悩みを共有したくて掲示板も作った。メールで「一緒に銭湯でものぞきに行きますか」と誘われたこともあった。気後れして連絡を絶った。
男児が載っている漫画やビデオを買いあさり「こんなものを持っているからだめになる」と捨てる。欲望と自己嫌悪のはざまで行き来し、痴漢行為もするようになっていた。
そして数年前。駅前で遊んでいた男児に声を掛け、人けのない場所に連れ込んだ。口をふさいでズボンを脱がせようとすると男児が逃げ出し、我に返る。ロープやカッターナイフまで準備していた自分が怖くなり、交番に自首した。男性は強制わいせつ未遂容疑で逮捕され、執行猶予付き有罪判決を受けた。
児童ポルノと性犯罪の因果関係について、米連邦刑務局は07年、児童ポルノ犯罪による受刑者を調査した。85%が過去に子供への性犯罪を起こしたと告白し、犯行は発覚すらしていなかった。
日本ではこうしたデータも存在せず「ポルノは犯罪の抑止力」という意見も根強い。「机上の論争はもうやめて、まず調査をしてから対策を考えるべきだ」。児童買春・児童ポルノ禁止法の改正を論議する与党議員からはそんな声が上がる。
「少なくとも自分にとっては児童ポルノは負の存在でした」。男性は今も週に1度、性依存に悩む人たちの自助グループに参加する。会合で体験を話すうちに、自分を客観視できるようになった。人間関係でストレスを感じ、パソコンで残虐な性的画像を検索していた過去。そんな性向を自覚して以来、自分に課していることがある。「もう児童ポルノは見ない」=つづく
毎日新聞 2008年6月4日 東京朝刊
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