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個別の問題

東京都東大和市がのどの障害に対応できないことを理由に認可保育園への入園を拒否したのは違法として、市内に住む青木鈴花ちゃん(6つ)と両親が市に入園不承諾処分取り消しや損害賠償などを求めた訴訟の判決で、東京地裁は25日、市の処分を取り消し、5つの保育園のいずれかへの入園承諾を命じた。

この問題は多くの論点を抱えている。中途半端になるので書かずにいようかと思ったが、やはり、少しだけ書く。

共同通信以外の報道や以前の報道にも目を通したが、読めば読むほど疑問が湧いてくる。

東大和市のHP等をみたが、保育サービスのレベルも高いものだと思う。その志も高いものだと思う。そのなかで、受け入れできないと判断したのは何故なのか?

1月の決定の判決文も読んでみたが、その性質上、これは原告側の主張が強く織り込まれている。



一般論であるが、そもそも、なんでもかんでも保育所または幼稚園という概念のなかで片付けてしまおう、この施設種別のなかで解決してしまおうという点に問題がある。

学校をみれば、通常の学級、特殊学級、特殊学校という3つの選択肢があるにもかかわらず、就学前については、保育所または幼稚園という1つの選択肢しかない。

余談だが、多くの自治体では、障害児向けに保育所の亜種のような障害児通所施設の類を提供していたが、例の自立支援法のおかげで障害者施設としてきちんと色分けされ、その運営も障害者施設らしい運営になってきている。親にしてみれば、保育所や幼稚園との代替性をますます感じられなくなっている。そのような背景も、保育所や幼稚園へ障害児受け入れニーズの背景にあると思う。

いずれにしても、障害児保育(幼児教育)の分野について、制度的な対応を棚上げしてきた国に責任があると思う。普通の保育所や幼稚園に多様な障害児を受け入れろということ自体が無理なのだ。厚生労働省も文部科学省も十分な政策を示していない。たとえば幼稚園では、一定レベル以上の障害児が一定レベル以上いなければ国費助成の対象にはならない。実質的には活用できない補助金だ。
現場の市町村は、特定の市民の満足は得られないまでも、様々な制約の中でよくがんばっていると思う。

また、障害児の問題を扱うにあたり忘れてはならないことは、1万人の障害児がいても、一人として同じ障害の子はいないし、同じ環境の子もいないということだ。そして、将来のある日に振り返り、今の選択がベストであったと言えるかどうか、それは神さえも知らないということだ。
この判決が確定することで、十分な検討や思慮もなく、通常の保育所等への受け入れを求める流れが強まり、市町村や保育現場がオーバーヒートしてしまうことに懸念を感じる。
障害児保育は、保護者と保育者(側)との信頼と協働の関係を確立しなければ不可能だ。

障害児の受け入れは、多くの場合、マンパワーの増強とコストアップが求められる。この点について、もっと制度上の検討が進められるなければならない。そうでなければ、本音の部分で一般市民の理解を得られないだろうし、自分の子さえ良ければ良いということにならないだろうか。ちなみに、判決文によれば、父の職業は株式会社の代表取締役で、母は経理事務だそうだ。母は祖母の看病にも従事しているということだ。それが「保育に欠ける」理由だそうだ。結局は、資力があれば法廷闘争もできるし、自宅でもそれなりの対応が可能だということか。

一人の子のために、年間数百万円を投じるのがいいのかどうか、議論しなければ政策として進めることはできないし、財政的に市町村独自に対応し切れるものでもないだろう。

司法府は政策を決定するのではなく、個別ケースの適否を法に基づいて決定するのみだ。しかも、1審判決に過ぎない。
この判決は個別案件についての判断であり、一般論としては行政府または立法府において議論しなければならない。
ただ、障害児は次々に生まれてくる。成長していく。速やかな議論と対応が求められる。

以下引用です。
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鈴花ちゃん入園拒否違法 東京地裁、賠償は認めず
[ 10月25日 15時58分 ] 共同通信
 東京都東大和市がのどの障害に対応できないことを理由に認可保育園への入園を拒否したのは違法として、市内に住む青木鈴花ちゃん(6つ)と両親が市に入園不承諾処分取り消しや損害賠償などを求めた訴訟の判決で、東京地裁は25日、市の処分を取り消し、5つの保育園のいずれかへの入園承諾を命じた。
 杉原則彦裁判長は「たんの吸引などで配慮は必要だったが、成長につれて症状が改善し、保育は可能。市の判断は裁量の範囲を超え、裁量権を乱用したもので違法」と判断した。損害賠償は認めなかった。
 東京地裁は1月、入園を仮に義務付ける決定をし、鈴花ちゃんは2月から市内の保育園に通っている
Excite エキサイト : 社会ニュース
by japan-current | 2006-10-25 20:44 | ニュース

胸を張って「BMIは22です」と言えるまでの徒然草。「japan current」とは「黒潮(日本海流)」のことですが、「日本の今」という意味合いをあわせて用いています。


by Japan-current